社団法人 鶴岡地区医師会鶴岡市立 湯田川温泉リハビリテーション病院

ごあいさつ

                   鶴岡市立湯田川温泉リハビリテーション病院
                        院長 武田 憲夫

 去る2019年5月11日(土)13:30〜17:30、鶴岡地区医師会館講堂において、当院主催で「地域における高齢者、認知症患者に対する在宅リハビリテーションと在宅支援について」というテーマでシンポジウムを開催致しました。昨年に続き、2回目の当院主催のシンポジウムになります。多くの方にご参加頂きたいと、県内各地域のリハビリテーションスタッフ、病院、施設に呼びかけ、これから益々重要になってくると思われる高齢者、認知症患者への在宅支援、在宅リハビリテーションなどをキーワードに議論したシンポジウムでした。高齢化社会と共に認知症患者が増加(2015年で約520万人 内閣府)、在宅支援、在宅医療の充実が謳われています(山形県地域医療構想 2016)。そして、社会は、とりわけ我々医療人は、これらにどう向き合い、どう対応して行くべきかが問われています。「認知症」、「高齢化」と言った、我々が未だ明確な解決策を持っていない問題に、地域地域で苦労し、悩みながら対応している方々にご発表頂き、話し合い、少しでも患者さんのため、ご家族のためになる支援、医療、介護、リハビリテーションの体制作りにお役に立てばと思っての開催でした。 

 当日89名(医師4名,看護師 7名,療法士71名、鶴岡市や事務系他7名)の方々のご参加を頂きました。昨年の本会は、リハビリテーション関連スタッフのみでシンポジウムを構成しましたが、この度は、認知症、高齢者、在宅医療、在宅支援といった、リハビリテーション以外のより広い医療,社会の問題を議論して欲しいと考え、日頃患者、家族とより密接に繋がりを持っている看護師の立場からご意見を頂くため、山形県立こころの医療センター看護師、さらに、認知症専門医でもあり「鶴岡オレンジプラン」のリーダーでもある荘内病院神経内科医丸谷宏先生にも指定発言という形でお願いし、ご発表頂きました。基調講演、シンポジストのご発表をお聞きし、その後参会者との熱い議論が交わされました。会の次第,各演者の副題は下記の如くです。


〇基調講演 (座長:武田 憲夫氏)                  

講師 山口 智晴先生(群馬医療福祉大学 リハビリテーション学部 作業療法専攻 教授)

演題 :「地域における高齢者、認知症患者に対する在宅リハビリテーションと在宅支援
     〜穏やかな地域生活の継続に向けて〜」

○シンポジウム(座長:富村 香里氏)

  シンポジスト

     佐藤 裕邦氏 (庄内地区 老人保健施設 うらら 作業療法士)

     清野 敏秀氏 (村山地区 朝日町立病院 作業療法士)

     黒田 昌宏氏 (村山地区 みゆき会病院 理学療法士)

     佐藤 広章氏 (置賜地区 在宅リハビリ看護ステーションつばさ 米沢サテライト
             言語聴覚士)

     三原 美雪氏 (庄内地区 山形県立こころの医療センター 看護師)

  指定発言

     丸谷 宏先生 (庄内地区 荘内病院 神経内科 医師)

 基調講演は、群馬県前橋市で、2013(平成25)年から、国のモデル事業として立ち上げた「認知症初期集中支援チーム」の中で、早期から認知症の方やその家族を訪問支援する取り組みを行い実績を積んでいる、群馬医療福祉大学リハビリテーション学部 作業療法専攻教授 山口智晴先生よりお話を伺いました。前橋市での支援対象者は既に200名以上の実績をお持ちで、「支援」の依頼は、地域包括支援センター、かかりつけ医、更には直接ご家族からもあるとのことで、地域全体を巻き込むネットワーク作り,広報が大切だと感じました。さらに、認知症の原因と状態に応じた、柔軟な対応、個々の家庭状況に合わせた生活が継続出来る環境整備,支援の重要性を強調されました。その根本は、認知症に限らず、人に優しい、住みやすい街づくりを皆で協力して目指すことが基本の姿だと感じました。

 シンポジウムは、湯田川温泉リハビリテーション病院作業療法士富村香里氏の司会のもと、6名のご発表と、その後約1時間30分にわたり様々な議論が交わされました。

 シンポジストのお話は、それぞれがこれまで苦労と模索を重ねて来たことを呈示し、重みと味のあるお話しばかりでした。その内容を網羅することは出来ませんが、私なりに簡単にまとめて紹介させて頂きます。

 うららの佐藤裕邦氏からは、個々に異なる患者状況に合わせた、「適切な」認知症ケアを如何に提供出来るようにするかの問題提案がありました。

 朝日町立病院の清野敏秀氏は、山形県作業療法士会として「認知症作業療法推進委員会」による認知症の方、ご家族への支援の内容を紹介、「おせっかい」のある「優しい地域作り」を提案されました。

 みゆき会病院の黒田昌宏氏は、個々に異なる認知症患者に対して、個々の事例を多職種で検討し、その認知症患者に合わせた、テーラーメードの対応をしている状況をお話し下さいました。

 つばさの佐藤広章氏は、米沢サテライトの利用者の中で、認知症の患者さんは4割程度で、多くを占めていないことを指摘。その理由は、本人やご家族が、「認知症」である事を拒否したり,関わりたくないことが原因になっているようです。そんな中で在宅生活を続けて行く事が出来るようにするためには、社会が、認知症に関わることが当たり前と感じる社会の雰囲気作りが大切と述べています。

 看護師の三原美雪氏は、認知症患者による様々な問題行動に対し、否定せず、環境整備や認容行動でやんわり対応することを提案しました。また、荘内病院の認知症ケアチームや多職種連携を基盤とした在宅医療に取り組んでいる「ほたる」、さらには医療と地域を結ぶ社会連携の推進を模索している「みどりまち文庫」などを紹介し、より広い職種を取り込んだ、地域包括ケアシステムの関与の重要性を強調し、医療関係者の連携だけでは無く、より広い職種との連携、社会連携が必要と述べました。「認知症、優しく包む地域の目」と社会全体で認知症とその家族を優しく包む仕組みづくりを提案しており、これは、この度のシンポジストが共通して提案していることと感じました。

 荘内病院丸谷宏先生は、鶴岡地区における脳卒中地域連携パスに関わっている地区内56の医療、介護、事業所にアンケート調査。回復期リハ退院後の生活期の地域連携の状況について問うたところ、約半数近くが地域連携は上手く行っていないとの回答でした。そして、もっと在宅支援や機能低下時のリハビリテーションに力を入れて欲しいとの要望があったとのことです。生活期における再発予防、ADL低下予防には、医療と介護のより広い、緊密な多職種連携,社会連携の必要性を強調されました。

 社会全体で認知症とその家族を優しく包む仕組みづくりは、認知症ばかりでは無く、障がい者、高齢者、不登校や引きこもりなどの社会的弱者とその家族にも対象が広がって行けるものと考えます。そのためには、医療関係者の連携だけでは無く、より広い職種との連携、社会連携の必性性を痛感しました。

 昨今、無差別殺人のような信じられない痛ましい事件が日本にも出てきていますが、その様な事件が生ずる原因の一つに、弱者を追い込む社会の雰囲気があるのではないかとも思ってしまいます。







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